【アリゲーターガー】危険な魚?特徴と生態を紹介!飼育、販売はNG

近年生態系を乱し、TVなどでも度々取り上げられている外来種。
今回は特定外来生物に指定されているアリゲーターガーの特徴などを紹介します。

アリゲーターガー(ガーパイク)ってなに?

アリゲーターガー(Atractosteus spatula)は、ガー目ガー科Atractosteus属に分類される大型の淡水魚。
『ガー』は7種いる硬鱗魚の総称です。
アリゲーターガーの別名は『ガーパイク』。ガーパイクは、槍の意味を持つ単語『gar』『pike』を2つを組み合わせたものです。
まさに槍の様な見た目の頭部に由来しています。

アリゲーターガー
画像:Greg Hume

アリゲーターガーはガー科の中で最大種。
野生下での全長は平均約2メートル以上と巨大な淡水魚。大きな個体では3メートル近くまで成長し、体重は150kgにも及ぶと言われています。
またアリゲーターガーは北アメリカ大陸最大の淡水魚とされていて、本来なら日本で見ることはありません。
一見ワニの仲間の様に見えますが実は違います。
ワニは爬虫類に分類され、アリゲーターガーは魚類に分類されます。

アリゲーターガーの特徴

外来種として近年日本でも捕獲されているアリゲーターガー。その個性的な体の特徴を見てみましょう。

ワニの様な口

アリゲーターガーの最大の特徴と言えるのが頭部から口にかけての部分。名前にもあるアリゲーター(ワニ)の口に見た目が良く似ています。
その長く幅広の口の中にはワニと同じように鋭い歯を持っています。

ガーパイクの絵

頭部は硬く、骨格も大きいのも特徴的。
2メートルもの大きさがあるアリゲーターが暴れでもしたらとても危険です。まさに鈍器と化します。

またその大きな口を横に振って器用に魚類や、甲殻類などを捕食しています。

包丁を通さない硬い鱗

アリゲーターガーを含むガー科の魚は頭部以外の全身をガノイン鱗と呼ばれるタイル状の特殊な鱗に覆われています。

このガノイン鱗は古代から生息している動きの遅い古代魚にみられる特徴です。
細かいタイル状の鱗が表皮に密着して出来ており、その鱗の硬さは包丁でも歯が立ちません。

肺呼吸とエラ呼吸のハイブリッド

魚類は主にエラで呼吸をすることで知られていますが、アリゲーターガーを含むガー類は肺を二つ持っており、人間の様に口から空気を取り込み肺呼吸をします。
二つある肺の一つは浮力調整(浮き袋)に使っていて、もう一つの肺で呼吸をしています。この肺は毛細血管が発達しているので血管から酸素を取り込める仕組みです。
肺で呼吸をする時は水面から口を出して呼吸します。

また、季節の変化による水温の変化により肺呼吸の割合が変化し、かわりにエラ呼吸の割合が上がります。排出される二酸化炭素はエラから排出されています。
肺呼吸とエラ呼吸を器用に使うハイブリッドな魚です。

アリゲーターガーの生態

見た目がワニに似ていて、恐ろしいアリゲーターガーのちょっと変わった生態を見てみましょう。

狩りのスタイルはワニと同じ

見た目がワニに似ていて怖いアリゲーターガーですが、意外なことに性格は穏やかで臆病な性格の持ち主。
基本的にはワニと一緒で待ち伏せて捕食をします。

ワニの狩の様子

アリゲーターガーが孵化した直後はプランクトンなどを餌にし、稚魚になると水生昆虫や、幼虫などの小型の甲殻類を餌にします。
また成魚になると肉食性になり、主に魚類やカニなど甲殻類を食べます。また大きい個体になると亀や、水鳥を襲うこともあります。
成長していくにつれて魚類の捕食割合が増えていく食性を持っています。

海と川両方で生息できる

アリゲーターガーは主に北アメリカ、アメリカ南東部に生息しています。
ミシシッピ川などの大きな河川の下流域や湖沼、幅が広くて水深が浅く流れの緩い河川を好みます。

アリゲーターガーその2
画像:SuperJew

アリゲーターガーは淡水魚ですが、海水に適応できる為、淡水と海水が入り混じっている汽水域や、海水域での生息が可能。
ほとんどの淡水魚は海水と淡水で浸透圧が異なる為、脱水症状を起こして死んでしまいます。
海水と淡水の両方で生息できる魚はあまり多くない為、珍しい魚です。

食べられるが卵には毒がある

あまり美味しくはなさそうですがアリゲーターガーの身は食べられます。
その味は淡白でパサパサした七面鳥や鶏の胸肉などと表現される事も多いです。
身は食べられますが、卵は哺乳類に対し強い毒性を持っている為、食べられません。

毒のイメージ

哺乳類よりも捕食される可能性のある魚類には全くの無毒だそうで、生態学的にこの毒がどういう役割を果たしたいるのかわかっていません。

古代からその形を変えずに生きてきた

アリゲーターガーなどのガー類はは硬骨魚類の中で古代魚として知られていて、今から約2億年前~6500万年前のまだ恐竜が地球に生きていた白亜紀の地層から現存種とほとんど変わらない姿のガーの化石が発掘されています。
また、ジュラ紀までに硬骨魚類は様々な進化を遂げてきましたが、白亜紀以降大きな進化もない事からガー類の起源も白亜紀以前であったと考えられています。
また、古くから巨大な個体が多く発見されています。

大きいアリゲーターガー
画像は1910年3月、ミシシッピ州ムーンレイクで捕えられたアリゲーターガー。

アリゲーターガーは原始的な特徴であるガノイン鱗、浮き袋、歪形尾を持っていて、『生きた化石』とも呼ばれています。

アリゲーターガーの飼育、販売はNG

アリゲーターガーを含むガー科の魚は2018年4月をもって特定外来生物に指定されています。

この『特定外来生物』とは海外起源の外来生物に対し指定される事があり、その目的は現存する生態系の保護、農林水産業への被害などを防ぐことを目的としています。
また、特定外来生物に指定された外来生物は研究目的以外での、飼育や運搬、輸入を禁じられます。

ですので今からペットとして購入、飼育する事は出来ません。
また譲り受けるのもNGです。

アリゲーターガーは危険、危害を及ぼすのか

通常、アリゲーターガーは臆病な性格ですので積極的に人を襲うことは無く、アリゲーターガーの方から襲ってきたという事例はありません。

ですが、アリゲーターガーがいる水面の上などで手をかざしたりすると、水鳥などと勘違いをして襲ってくる事があります。ですのでアリゲーターガーを発見したらあまり近づかない方が良いでしょう。
また、釣り上げた後に暴れたりする事も多いので十分に気を付けて下さい。

人への危害はあまり危惧されていません。ですが現存している生態系に悪影響を及ぼしています。

日本国内にもアリゲーターガーは生息している

アリゲーターガーは外来生物。日本にいるはずのない種なのですが、その姿は日本全国各地の湖や、河川、池などで発見、捕獲されています。

東京の多摩川や荒川、熊本、大阪、山口などで発見、捕獲され、国の特別史跡に指定されている名古屋城のお堀でもその姿が発見されています。

なぜ日本にアリゲーターガーがいるの?

本来日本にいないはずのアリゲーターガーが日本にいるのは変ですよね。

原因はペットして飼っていたアリゲーターガーを河川や、湖に放流し事が原因だと考えられています。

アリゲーターガー生息地のイメージ

アリゲーターガーは飼育魚として人気があり、安価で購入出来た為、軽い気持ちで購入した人が多かったのでしょう。

ですがアリゲーターガーは成長すると約2メートルを超える巨大魚、また寿命も10年以上と長いです。
その事を熟慮せずに飼っていた方が無責任に放流したと考えられています。

まとめ

最近テレビなどのメディアでもよく取り上げられている外来生物。
その一種のアリゲーターガーの特徴、生態を紹介しました。
アリゲーターガーは人間には危害を与えませんが特定外来生物に指定されています。

アリゲーターガーは日本各地の色々な所で生息しているので、もしかしたら釣りなどをしていたら釣れるかもしれませんね。
釣りをしている際にガーが釣れた場合は、捕まえるのは大丈夫ですが、運ぶのは違法になりますので持ち帰らないようにしましょう。