セミの種類まとめ12選!鳴き方の違いや特徴、鳴き声の仕組みを解説

夏が近づくとどこからか聞こえてくるセミの声。
ただでさえ暑いのにセミの鳴き声を聞くと余計に暑く感じますよね。

夏の風物詩にもなっている蝉ですが、日本には約30種類が確認されていて、それぞれ生息地や鳴き声、鳴く時間帯が違います。

今回はセミの鳴き声と、日本にいるセミの種類を紹介します。

セミの鳴き声について

気温が高くなる夏、外に出るとこれでもか!と大きな声で鳴いているセミの鳴き続ける理由と、鳴き声の仕組みをみていきましょう。

セミが鳴く理由

セミが鳴くのには理由があります。ただ訳もなく鳴いているのではなく、オスがメスに対して鳴くことで求愛をしているのです。
鳴く事でオスはメスに自分の存在を知らせ、鳴き声を聞いたメスがオスの所に移動するようです。

基本メスから鳴く事はありません。
鳴かない理由は外敵から身を守る為(鳴くと存在を外敵に知られる為)、鳴く器官が発達していない為だとされています。
ですので、鳴いているのはオスのセミだけという事になります。

鳴き声の仕組み

セミが鳴き声を出す仕組みの一つが羽を擦った時の摩擦音。
羽の摩擦で鳴く昆虫は多く、スズムシやコオロギなども羽を擦る事で鳴いています。

羽を擦って鳴く以外にもセミにはもう一つ鳴く仕組みがあります。
その仕組みはお腹の辺りにある発音器官です。
この器官はオスのみが持っており、メスにはありません。

セミの腹部の断面図
腹部の横断面から見た発音器官の模式図。1, 発音器官 2, 発音膜 3, 発音筋 4, 共鳴室 5, 気門 6, 鼓膜

セミが鳴くときはまず、『発音筋』を振動させて音を出します。
発音筋の振動回数は1秒あたり2万回。

MEMO
一般的な電動歯ブラシの中で最も振動数の多いモデルで1秒あたり約550回。驚く事にセミは1秒間に電動歯ブラシの約35倍もの振動を起こして鳴いています。
1秒間に2万回も振動する労力は容易いものではないでしょう。命をかけてメスを呼んでいるのでしょうね。

鳴き声は発音筋だけでなく、発音筋の振動を発音膜に伝えて、最後に腹部にある空洞の『共鳴室』と呼ばれる器官に伝えます。
共鳴室では中の空気が発音膜の振動に共鳴して、何倍もの大きさにし鳴きます。

また、腹弁を開閉する事で鳴き声の大きさや、調子、強弱を変えています。

日本にいる代表的なセミの種類

セミは世界で約1600種類が確認されていて、日本で生息しているセミは約30種類が確認されています。
その中で12種類をピックアップ。特徴や生息地、鳴き声、鳴く時間帯などを紹介します。

アブラゼミ

アブラゼミの成虫の体長は56〜60mm程。
よく見かけるアブラゼミは日本全土、田舎の山奥から都会まで様々な所で見ることの出来る種です。
アブラゼミの名前の由来は諸説あり、翅が油紙を連想させる事から来た説や、鳴き声が油が撥ねる時の音に似ている事から由来している説もあります。

アブラゼミ
画像:Takashi Hososhima

アブラゼミの一番の特徴は翅の色です。ほとんどのセミは透明の翅を持っていますが、アブラゼミの翅は前後共に不透明の茶褐色をしています。

アブラゼミの主な生息期間は7月〜9月上旬とされていますが10月などでもたまに鳴き声がきこえてくることもあります。

鳴く時間帯は陽が傾き始めた夕方から日没までですが、生息密度が高いと夜鳴きをします。
夜鳴きをするのはアブラゼミに限った事ではありませんが、夜鳴きする他の種と比べてもアブラゼミは夜鳴きをしやすい傾向にあります。

そんなアブラゼミの鳴き声は『ジー…』と鳴き始め、『ジジジジジ…』と大声で聞こえて20秒ほどすると尻すぼみになり鳴き終わります。

ヒグラシ

ヒグラシの成虫の体長は20mm〜38mm程。
ヒグラシは北海道から奄美大島までのほぼ全国に分布しています。特に広葉樹林やヒノキ、スギなどの林に生息しており、九州などでは標高の高い山地に生息しています。

ヒグラシの見た目

赤褐色で半透明な体色をしていますが、頭の一部だけ緑色になっているのが特徴です。

ヒグラシは主に梅雨の6月下旬〜7月に鳴き始めます。
鳴く時間帯は夜明け前や日没後などの気温が下がった時間帯で鳴く事が多いです。また、森林の暗い場所では夕暮れの時間帯に鳴く事もあり、『日を暮れさせるもの』として『ヒグラシ』という和名がついたといわれています。

ヒグラシの鳴き声は『カナカナカナ…』と聞こえるというのが一般的です。

ハルゼミ

ハルゼミの成虫は体長23mm〜32mm程。
日本では本州〜九州に分布しています。
ハルゼミはかなりの偏食でアカマツなどのマツ林周辺でしか生息しておらず、市街地などではほぼ見る事が出来ません。
近年ではマツクイムシによるマツ林の減少などにより生息地が減っているため、各自治体レベルで絶滅危惧種に指定されている事が多いようです。

ハルゼミ画像:Almandine

見た目はヒグラシを黒くして小さくした様な外見を持っています。翅は透明ですが全体的に黒っぽい見た目です。

セミの多くは夏に現れますが、ハルゼミはその名の通り4月〜6月の春に成虫になって姿を現します。
ハルゼミは朝から夕方まて鳴きますが、特に活発に鳴くのは午前10時頃〜午後2時頃まで。

鳴き声は「ジーッ・ジーッ…」「ゲーキョ・ゲーキョ…」「ムゼー・ムゼー…」と聞こえます。
また、ハルゼミは合唱性があり、一頭が鳴き始めると周りのハルゼミもつられて鳴き始めます。

ヒメハルゼミ

ヒメハルゼミの成虫の体長は21mm〜28mm程。
日本では新潟県、茨城県以南の本州から南は奄美大島まで分布します。
主に丘陵地や山地の照葉樹林など、人の手が届いていない森林で生息しています。

ヒメハルゼミ

見た目はハルゼミに似ていますが、ハルゼミより体色は淡い色をしていて、褐色がかっています。
また横幅は広いですがお腹の辺りから細くなっていて、細長く見えます。

ヒメハルゼミは6月下旬頃〜8月上旬頃に現れ、昼過ぎから日没後まで鳴きます。
鳴き声のピークは午後4時頃と日没後。

鳴き声は『ヴィーン、ヴィーン、ヴィーン』と聞こえます。
また、ヒメハルゼミは合唱性を持っていて、一頭が鳴き始めると周囲のヒメハルゼミも鳴き始めます。

エゾハルゼミ

エゾハルゼミの体長は23mm〜33mm程。
日本では北海道から九州まで分布しています。名前に蝦夷(エゾ)と付いていますが、北海道以外にも生息しています。
寒い地域を好み北海道などでは平地でも生息していますが、東北以南では800m以上の高山に生息しています。

主に、エゾハルゼミは落葉広葉樹林に生息していますが、広葉樹林の伐採などで生息地が減少しているため、各都道府県ごとに絶滅危惧種として指定されている事も多いようです。

エゾハルゼミ画像Alpsdake

エゾハルゼミはハルゼミの仲間で、ハルゼミを小さく、体色を淡くした様な体色を持っています。

エゾハルゼミは5月中旬〜7月下旬頃まで、早朝から夕方まで精力的に鳴きます。
北海道、東北にはハルゼミは生息していない為、エゾハルゼミが最も早く現れるセミになります。

鳴き声は「ミョーキン・ミョーキン・ケケケケ…」あるいは「オーギィー・オーギィー・オーギィーォ・キギギギギギギ」と聞こえ、かなり特徴的な鳴き声をしています。

ミンミンゼミ

ミンミンゼミの成虫の体長は33mm〜36mm程。
日本では北海道南部から九州にかけて分布し、主に傾斜地の森林に生息しています。

ミンミンゼミ画像:Alpsdake

ミンミンゼミの体は、たまごの様に横幅が広く、寸胴な体型をしていています。翅は体に対して大きく、翅を含めると体長は50mm程にもなります。

体色は主に黒ですが、所々に水色や緑色の斑紋があり、セミの中ではカラフルで特徴的です。
またミンミンゼミの体色は、生息地によって異なっていて、黒みが強い個体や翅を除いて真っ黒な個体もいるようです。

ミンミンゼミは7月下旬〜10月頃に現れ、午前中は特に鳴きます。

鳴き声は和名の通り『ミーンミンミンミンミー…』と聞こえます。
ミンミンゼミの鳴き声は日本のドラマなどの効果音として頻繁に使われていて、夏の風物詩となっています。

クマゼミ

クマゼミの成虫の体長は60mm〜70mm程と大きく、日本ではヤエヤマクマゼミに次いで大きい体を持っています。
クマゼミは温暖な気候を好む為、日本では西日本以南に分布しています。
また、東北などの寒い地域ではほぼ生息していないようです。
クマゼミは主に、温暖な地域の平地や低山地などに生息し、都市部などでも公園や街路樹などで見る事ができます。

クマゼミ画像:Alpsdake

翅は透明で、付け根のあたりが緑色をしています。
体色は艶のある黒色で、腹部は白色も混じっています。

クマゼミは7月上旬〜9月上旬頃に現れ、日の出から正午まで、特に気温が上がる午前7時〜午前10時頃に大きな声で鳴きます。
午後、雨の日や曇りの日はあまり鳴かず、キンモクセイやサクラの木に止まって樹液を吸っています。

鳴き声は「シャシャシャ…」や「センセンセン…」
と聞こえます。

ツクツクボウシ

ツクツクボウシの成虫の体長は30mm前後。
日本では北は北海道から南はトカラ列島まで幅広く分布しています。
森林があれば平地から山地、市街地などにも生息しています。

ツクツクボウシの成虫画像:Alpsdake

ツクツクボウシの体色は黒をベースに、頭から胸の辺りまで緑色になっています。
見た目はヒグラシに似ていますが、頭部や腹部がヒグラシより広く見分けがつきます。

ツクツクボウシは7月〜9月下旬に現れ、夕暮れ時から日没後まで鳴きます。
知っている方も多いと思いますが、鳴き声は和名の通り『ジー…ツクツク…ボーシ!ツクツクボーシ!』と聞こえます。

ニイニイゼミ

ニイニイゼミの成虫の体長は33mm〜38mm程。
日本では北海道から沖縄本土までほぼ日本全土に分布していますが、喜界島・沖永良部島・与論島では生息していません。
平地の雑木林などには主に生息しており、都市部でも見ることが出来ます。

ニイニイゼミの成虫画像:Σ64

頭部と胸の辺りは灰褐色をしていて、腹部は黒色。
他のセミと比べて体は丸く、横幅が広いです。
セミの翅は透明な種が多いのですがニイニイゼミの翅は褐色のマダラ模様をしています。
その見た目から樹皮に紛れる保護色となっているので、遠くから見ると木に小さなコブがあるように見えます。

ニイニイゼミは6月下旬頃〜8月に姿を現し9月になるとほとんど見られません。
昼夜を問わず鳴きますが、日中の暑い時間帯にはあまり鳴きません。

鳴き声は『チー…ジー…』と聞こえます。
鳴き始めは「チー」が数秒、その後「ジー」が数秒-10秒ほどで緩やかに「チー」へ戻り、数秒後に再び「ジー」となり、鳴き終わりは「チッチッチ…」となります。

コエゾゼミ

コエゾゼミの成虫の体長は34mm〜38mm程。
日本では北海道から西は広島県までに分布しています。
北日本では平地に見られ、西の方だと標高900m以上の山地を好んで生息しています。

コエゾゼミの成虫画像:Σ64

見た目はエゾゼミと非常に似ていていますが、コエゾゼミは背中にあるW模様の上にある横一直線の模様が途切れています。
エゾゼミの横に伸びる模様は頭部にかけて繋がっていますので見分けることが出来ます。

コエゾゼミは7月上旬〜8月下旬頃まで現れます。
樹種の好き嫌いはあまりなく、色々な樹木に止まります。

鳴き声は『ジー』と聞こえます。
鳴くときは頭を下にして逆さに止まり鳴きます。

チッチゼミ

チッチゼミの成虫の体長は20mm〜28mm程。
日本では北海道から九州まで分布しており、沖縄を除くと国内最小のセミです。
マツやスギなどの針葉樹を好み、特にアカマツ周辺に生息します。

チッチゼミの成虫画像:ミュージアムパーク茨城県自然博物館

全身は黒く、腹部はオレンジ色をしています。背中には黄色の点が2つあるのが特徴です。

チッチゼミは7月下旬頃〜10月中旬に現れ、昼夜を問わず鳴きます。

鳴き声は『チッチッチッチッ』と抑揚無く鳴く為、チッチゼミを知らなければセミの鳴き声だとは思わない様な鳴き声です。

イワサキクサゼミ

イワサキクサゼミの体長は12mm〜17mm程で日本産の最小種のセミです。
日本では沖縄本島、宮古島、石垣島、西表島に分布します。
サトウキビやススキなどのイネ科の植物を好み生息しています。

イワサキクサゼミの成虫

全身黒色で腹部はオレンジ色、金色の産毛を纏っています。翅の脈は緑色をしていて見た目はとても美しいセミです。

イワサキクサゼミは主に3月〜7月に現れ、午前9時〜正午にかけて盛んに鳴きます。
休息時はサトウキビなどの葉の裏側に止まり、活動時には葉の表に出てきます。

鳴き声は『チーー』、『チッチッチッチ』と聞こえます。

まとめ

夏のイメージの強いセミですが、意外にも春から鳴くセミもいましたね。
種類ごとに鳴く時間帯や、生息地などにもそれぞれ違いがあり面白いですね。

世界には約1600種類のセミがいると言われています。どんなセミがいるのか調べてみると面白いかもしれませんね。