【ベラドンナ】幻覚を見せる魔女の花?危険な毒と花言葉の由来に迫る

ベラドンナの花

魔女の花の異名を持つ花『ベラドンナ』。
綺麗な花から茎、地中に埋まった根まで至る所に毒を持つ植物です。
猛毒の植物として知られていますが、毒だけではなく、ベラドンナの持つ成分は美容法としても用いられていた過去もあります。
今回はベラドンナの持つ危険な毒と薬としての側面、花言葉とその由来について紹介していきます。

ベラドンナとは

ベラドンナはナス、トマト、じゃがいもなどが属するナス科のオオカミナスビ属に属する多年生草本植物。
英名では『Deadly nightshade』と呼ばれ、日本ではベラドンナの他に『オオカミナスビ』『セイヨウハシリドコロ』などとも呼ばれます。

ベラドンナのイラスト

ベラドンナは西欧、西アジア原産の植物ですが、ヨーロッパ人の手によってアメリカ大陸に持ち込まれため、現在ではアメリカでも自生しています。
またベラドンナは医療薬品としての用途があることから最近では世界中で栽培されています。

ベラドンナは湿気の多い山間部の日陰の多い場所を好み自生します。日光にとても弱いので日の当たる場所ではほぼ生えません。
また暑さにも弱いことから日本では北海道や長野県などの夏でも涼しい東北地方で栽培されているようです。

ベラドンナの名前の由来

和名の『ベラドンナ』は学名の『Atropa bella-donna』をそのまま読んでいます。
ベラドンナの名前はイタリア語でベラ(美しい)ドンナ(婦人)という意味があり、その昔ベラドンナの実の成分を使い、瞳孔を大きく美しく見せるために使われていた事に由来しています。

ベラドンナの美容法

『美しい女性』を意味するベラドンナですが、花から根まで至る所に毒を持っているため『悪魔の草』『魔女の花』などとも呼ばれています。

ベラドンナの花

ベラドンナは春になると発芽し、その後晩春〜初夏(5月〜7月)にかけて開花します。

ベラドンナの花CC BY-SA 3.0/Rüdiger Kratz, St. Ingbert

花は薄い紫色で下向きに鐘の様な形の花を開きます。
花びらはナス科の花の特徴としても挙げられる合弁が5つに裂けており、先端は反り返る特徴的な形をしています。

ベラドンナの葉

ベラドンナの葉は大きさ20cm程度、先が尖った卵の様な楕円形。葉のつき方は互生ですが、上部では輪生、対生で葉が生えています。

ベラドンナの葉CC BY-SA 3.0/Tom Oates

ベラドンナの葉はヨーロッパでは古くから薬用として知られていて『ベラドンナ葉(Belladonna leaf)』と呼ばれていました。

ベラドンナの実

夏が過ぎ、花が枯れるとその後に緑色の実をつけます。
実は熟すにつれて黒色に変色し、完熟になると実は真っ黒になります。

ベラドンナの実CC BY-SA 3.0/Kurt Stüber

実は甘いと言われていますが、毒となる成分を含んでいますので食べる事は出来ません。
完熟のベラドンナの実はブルーベリーと見た目が似ているため、海外ではブルーベリーと誤認して食べてしまった事例もあるようです。

ベラドンナの花言葉

ベラドンナの花言葉は『汝を呪う』『男への死の贈り物』『人を騙す者の魅力』『沈黙』。

『汝を呪う』『男への死の贈り物』はその昔ベラドンナは魔女が栽培し、人を殺す毒や空を飛ぶための秘薬などに使われていたと言う伝承に由来します。

魔女の秘薬のイメージ

また、ベラドンナの属名Atropaはギリシャ神話の運命の女神アトロポスにちなんだ名前であり、アトロポスは運命の糸を断ち切る死の女神であるため恐ろしい花言葉がついたのでしょう。

『人を騙すの者の魅力』は、昔の女性がベラドンナの実の成分を利用し、瞳孔を拡散させて目を大きく美しく見せていた事に由来します。
この美容法は大変危険で、過去には死者も出ています。

『沈黙』の由来に関しては調べても全く出てこないため由来は不明ですが、ベラドンナの花言葉は、いずれも恐ろしく怖い花言葉です。

ベラドンナの毒

ベラドンナは全体に毒を持ちますが、中でも強いのは根と根茎です。
食べられそうな見た目の実も毒性は強く、誤って食べてしまうと最悪死に至ります。また葉には油が浮いていて、触れただけで皮膚がかぶれてしまいます。

ベラドンナの全体CC BY-SA 3.0/Rüdiger Kratz, St. Ingbert

ベラドンナの成分を過剰に摂取すると吐き気、めまい、脈拍の増加や異常興奮などの中毒症状を引き起こすとされています。
また薬物の様に幻覚が見える事もあるようで、暴れ回ったり、意識ぐ錯乱するなどの症状が起きる事もあるようです。

幻覚が見える花はベラドンナ以外にも存在していて、エンジェルトランペットなども中毒を起こすと幻覚が見えると言われています。

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毒は薬にもなる

ベラドンナの毒は有害ですが、用量・用法を守れば薬としての役割を持ちます。
大昔から実際に薬として用いられいて、ベラドンナの成分による鎮痛作用を利用し、手術の際の麻酔薬として用いられています。

他にも身近な所では鼻水を抑える効果があるため、市販の鼻炎薬や市販の風邪薬、鎮痛薬などにも使われており、地下鉄サリン事件ではサリンの解毒剤としても使われました。