【オオサンショウウオ】寿命100年⁈絶滅危惧種の生息地と生態に迫る

かわいいキャラクターとして人気のオオサンショウウオ。
生息地の一つである京都の鴨川などで度々目撃されSNSなどで話題になっている動物です。

両生類最大の体長を持つオオサンショウウオは長寿な生き物だといわれていて、寿命は長く100年を超えるとか超えないとか…
でも実は長寿なのに絶滅危惧種であり、国の特別天然記念物に指定されてたりもします。

今回は特別天然記念物『オオサンショウウオ』の生息地や生態、謎に包まれた寿命と絶滅危惧種指定の実態を紹介していきます。

オオサンショウウオとは

オオサンショウウオは有尾目オオサンショウウオ科オオサンショウウオ属に分類される生物。

オオサンショウウオは別名『ハンザキ』とも呼ばれます。
この呼び名は『体を半分に切り裂かれても生きていそうな動物だから』という説や、『捕食の際に大きく開く口が裂けている様に見える』という事から由来した説があります。

オオサンショウウオのあくび

オオサンショウウオは数千万年前から現在に至るまで姿形を変えずに生きてきた事から『生きた化石』と呼ばれます。

オオサンショウウオの特徴

オオサンショウウオはほとんどが全長50cm〜70cmほどですが、過去には最大全長150cmまで成長した記録があります。
また、野生の個体では全長100cmまで育つ事自体が稀だとされているため、記録は飼育下での全長だと思われます。

赤褐色のオオサンショウウオ

オオサンショウウオの体は全体的に平べったくなっています。特に頭は大きく扁平になっていて、目はどこにあるのかわからないぐらい小さく、先端には鼻の穴が2つ並びます。
口は横に大きく頭部の幅いっぱいまで広がり、奥行きも頭部の半分ほどまであります。
また、大きい口の中には大きさ1mmほどの小さな歯がびっしりと生えています。

オオサンショウウオの頭部の骨CC BY-SA 4.0/Didier Descouens

体表には小さなイボイボがたくさんあり、皮膚はナマズの様にヌルヌルしています。
多くのオオサンショウウオの体色は、茶褐色系の色に黒い斑点模様が不規則に並んでいます。

また、オオサンショウウオを刺激すると背中から白い粘液を出します。
白い粘液は独特な匂いを放ちますが、その匂いは『山椒』のような匂いだと例えられています。
この匂いが『山椒魚』の由来だと言われていますが、実際は独特な匂いで山椒らしさは無いようです。

オオサンショウウオの生息地

オオサンショウウオの種小名 japonicus は「日本の」の意味を持ちます。
種小名の通り、本来は日本が原産の固有種で、岐阜から西側の本州や九州に生息します。
(主な生息地:岡山県、兵庫県、島根県、和歌山県、山口県、三重県、愛知県、岐阜県、大分県、鹿児島県など)

オオサンショウウオの生息地のイメージ

オオサンショウウオは『渓流の王者』とも呼ばれ、主に流れの穏やかな渓流や標高400m〜600mの河川の上中流域に生息します。
その中でも流れが穏やかであり、餌となる昆虫などが多く、夏場でも水温が高くなりすぎない川を好んで生息するようです。
また、渓流だけでは無く小川や用水路などでもその姿を見ることが出来ます。

オオサンショウウオの生息地

また現在ではオオサンショウウオが生息していたとされる岐阜県の和良川及び支流域、岡山県の川上村、八束村、中和村、真庭市、大分県では宇佐市と由布市(湯布院)が『オオサンショウウオの生息地』として国の天然記念物に指定されています。

オオサンショウウオの生態

渓流をこよなく愛するオオサンショウウオは陸にはあまり上がることはない『完全水性』の両生類です。
オオサンショウウオが活動するのは夜の間だけ。昼間は水辺に掘った巣穴の中や岩陰などでゆっくり休んでいます。

餌と捕食の方法

オオサンショウウオの餌となるのは小魚、エビ、貝やサワガニ、カエルなどなど…非常に雑食でグルメな一面を持ちます。
また、オオサンショウウオは捕食活動に対して非常に貪欲で、上記の餌に留まらず川ネズミやヘビを食べたり、さらには共食いをしたケースも確認されているようです。

黄色いオオサンショウウオ

雑食でグルメなオオサンショウウオの狩りは基本的には待ち伏せ型。獲物が近くに来るまではひたすら待ち続け、餌が目の前に現れると襲いかかります。

一生をほぼ水の中で過ごすオオサンショウウオは水の中では俊敏に狩りをしそうなイメージを持ちますが、目が小さくあまり発達していません。
そのため獲物を追っかけて捕まえる狩りはオオサンショウウオには向いておらず、待ち伏せて餌を獲得しています。

繁殖について

オオサンショウウオは卵生。
オスは6月から7月頃になると産卵のために使う産卵巣を掘りメスが来るのを待ちます。
メスがやって来るまでの間には他のオスと産卵巣をかけて争う事も度々あるようで、負傷するのは大体がこの時期のようです。

川に潜むオオサンショウウオ

産卵の時期は8月から9月だといわれており、その時期になるとメスはオスが守っていた巣穴に入り産卵します。
一回の産卵で産む卵の数は400〜500個。全てが数珠状に繋がってひと塊りになっています。

卵から孵化するのは40〜50日後。オスはこの卵達が孵化するまで巣穴の中で見守ります。
生まれてから4〜5年後に性成熟し、ようやく一人前のオオサンショウウオとなります。

オオサンショウウオの寿命

生きた化石とも呼ばれるオオサンショウウオの寿命は飼育下だと、51年の飼育記録がある大変長寿な動物です。
野生下でも10年以上は生きるといわれていて、同じ両生類のカエルやイモリもと比べてもかなり長い寿命を持ちます。

オオサンショウウオの昼寝

一説では寿命は100年を超えると言われているオオサンショウウオですが、実はその寿命については、はっきりと解明されておらず、寿命は推測の域を出ていないのが現状です。
なかなか寿命が解明されない原因として考えられるのは、生息地の減少と純粋なオオサンショウウオの個体数の減少など。
また長寿であるオオサンショウウオを解明する為には何世代もの間研究する必要があります。
研究者達の孫の代までかかる可能性もありますね。

オオサンショウウオのイラスト

謎に包まれているオオサンショウウオの寿命の研究は、兵庫にある『日本ハンザキ研究所』などで行われています。
オオサンショウウオにマイクロチップを埋め込んで寿命を計測する方法を用いた研究が行われていますが、研究結果が出るまでには多大な時間を要する事が懸念されます。

オオサンショウウオの寿命が解明されるのはまだまだ時間がかかるのかもしれないですね。

オオサンショウウオは絶滅危惧種

オオサンショウウオは青森から鹿児島までで過去に捕獲された例があり、和歌山には個体群がありますが、いずれもオオサンショウウオでは無く中国原産の『チュウゴクオオサンショウウオ』ではないかと言われています。
外来種であるチュウゴクオオサンショウウオは、人の手によって日本に流入したと考えられています。

チュウゴクオオサンショウウオ

Twitterで話題となったオオサンショウウオの生息地で知られる京都の鴨川では、京都市による中国オオサンショウウオ対策委員会の調査が行われています。
その最新の調査では鴨川系、桂川系で捕獲数53匹の内3匹が外来種、32匹が交雑種であったとされており、在来種は全体の半数にも満たない約34%ほどしか確認されていません。
また鴨川系の流域だけで見ると在来種は確認されておらず、絶滅した可能性も危惧されています。

いずれにしてもチュウゴクオオサンショウウオによる遺伝的汚染は広がっており、日本原産のオオサンショウウオは希少となっています。

オオサンショウウオ絶滅危惧種指定CC BY-SA 2.5

現在オオサンショウウオは環境省のレッドリストの『絶滅危惧種Ⅱ類(vu)』に指定されており、絶滅が危ぶまれいます。

日本原産のオオサンショウウオを守るためにはチュウゴクオオサンショウウオとの隔離が必要不可欠です。
しかし、チュウゴクオオサンショウウオも絶滅危惧種であり、ワシントン条約附属書Ⅰに記載される種の保存法の国際希少野生動植物種に指定されています。
そのため国際的に保護活動が行われており、単に外来種として処理出来ないのが実情のようです。

オオサンショウウオは食べられる?味は?

国の特別天然記念物であり絶滅危惧種でもあるオオサンショウウオは当然のことながら触れる事も許されないため食べる事は出来ません。
ですが特別天然記念物に指定されるまでは貴重なタンパク源として重宝されていたようです。

かわいいオオサンショウウオ

オオサンショウウオは食べる事は出来ませんが、一方でチュウゴクオオサンショウウオは絶滅危惧種でありながらも食用として用いられています。

野生下での捕獲などは当然出来ませんが、養殖しているチュウゴクオオサンショウウオの3世代目以降の個体は、食用として用いられる事が可能なんだとか。
原産地の中国では高級食材、美容品などにも用いられ、滋養強壮や貧血防止に効くとされていて漢方薬などにも用いられます。
中国のレストランなどでは取り扱っている所もあるようなので、興味がある方は是非行ってみてください。
ちなみに味はスッポンの臭みを抜いたような上品な味と例えられる事もあるので、美味しい事は間違いないでしょう。

オオサンショウウオをペットとして飼育したい

結論からいうとオオサンショウウオをペットとして飼うことはできません。
特別天然記念物に指定されているので、個人での飼育は法律で禁止されているためです。

オオサンショウウオの背中

また一部ではオオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオのハーフである交雑種は飼育可能だといわれていますが、外見上では判断が出来ず、DNA鑑定などをする意外に方法がありません。

そのためオオサンショウウオを飼育する事は叶わず、チュウゴクオオサンショウウオとの交雑種も飼えない事はないですが、現実的に見るとやはり不可能でしょう。

オオサンショウウオを見たいなら京都水族館がオススメ

日本国内でオオサンショウウオを飼育、展示している動物園、水族館は29箇所あります。
その中でも京都水族館は、オオサンショウウオをとても熱く推しています。

水族館

京都水族館のオオサンショウウオ推しは話題になる事も多く、毎年クリスマスになると『オオサンショウウオツリー』が展示されたり、オオサンショウウオのぬいぐるみを買うと、店員さん達から一斉に『オオサンショウウオお買い上げありがとうございましたー!』と熱のこもったオオサンショウウオコールを聞けるとか…笑

また期間限定ではありますが、『オオサンショウウオと生息地で出会える』という趣旨の疑似体験企画『京都水族館ぬめぬめワールド~世界最大級の両生類は鴨川にいた!!~』が開催されています。
この企画ではプロジェクションマッピングなどを用いて、オオサンショウウオの生息地である鴨川上流をリアルに再現していて、音や匂いまで感じる事ができる臨場感たっぷりの体験企画だそうです。

開催日時は2019年4月27日~2019年9月1日まで。

その他京都水族館の詳しい内容については京都水族館公式サイトで確認ください。