秋になるとよく目にするトンボ。
全世界に約5000種類、日本には約200種類のトンボが存在するといわれています。
トンボと人との歴史は古く、トンボは前にしか飛ばない『不退転』を表すと考えられ、戦国時代などでは『勝ち虫』とよばれ、武士たちの間では縁起のいい虫として扱われていた過去を持ちます。
人との関わりの深いトンボですが、私たちが目にするトンボはほんの一部に過ぎません…
今回は『日本に生息するトンボ・最大最小・綺麗な色をしたトンボ』などを画像と共に紹介していきます。
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日本のトンボ
アキアカネ(赤トンボ)
まずは、童謡『赤とんぼ』に登場するアキアカネ。
赤とんぼの歌詞『夕焼け、小焼けの赤とんぼ』の赤とんぼは、アキアカネの事を指しています。
日本では沖縄県を除く各地に分布している種であり、日本以外にもロシアや中国などにも生息しています。
赤い体が特徴的なアキアカネですが、体は最初から赤い訳ではなく、成長するにつれて茶褐色から徐々に赤みを帯びていきます。
アキアカネの成虫は古くから解熱剤や強壮剤として効果があると考えられていて、捕まえて乾燥し民間薬として用いられていた過去があります。
一方でアキアカネについては色々な言い伝えがあり、捕まえるとバチが当たる、東北では捕まえると雷が落ちると言われ『かみなりとんぼ』というちょっと変わった名で呼ばれてたりもします。
オニヤンマ
トンボ界最強の呼び声が高いオニヤンマは小さい子供から昆虫好きの方まで幅広い人気を持つトンボです。
体は比較的大きく、黒色に黄色の縞模様が特徴的。
日本列島ほぼ全域に分布しています。
オニヤンマの体長は日本原産のトンボの中で最大。
噛む力はとても強力で飛行時の最大速度は時速70kmで飛ぶと言われています。
この素晴らしい運動性能をもつオニヤンマは、昆虫界最強のスズメバチをも捕食する事もあるようです。
周りに敵はいないように思えるオニヤンマですが、東京都では生息数の減少から『準絶滅危惧種』に指定されています。
オニヤンマの絶滅だけは避けてほしいものですね…
【オニヤンマ】天敵スズメバチを捕食する最強のトンボ!絶滅の可能性は?コオニヤンマ
コオニヤンマは名前の通りオニヤンマにそっくりのトンボで、オニヤンマと比べると体長はやや小さい。
そのため小型のオニヤンマという意味で『コオニヤンマ』と名が付けられたといわれています。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
体の大きさ以外にもオニヤンマとの違いがあります。
複眼と呼ばれる眼がオニヤンマは大きく、頭部の中央で接しているのに対し、コオニヤンマの複眼は小さく、左右にそれぞれ離れています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
※画像左がコオニヤンマで右がオニヤンマ
ちなみにオニヤンマそっくりのトンボですが、分類上はヤンマ科でもオニヤンマ科でもないそうです…
ギンヤンマ
ギンヤンマはヤンマ科に分類されるトンボ。
日本全国に生息しており、都市部などでもその姿を見ることが出来ます。
ギンヤンマは頭から尾まで7cmほどあり比較的大型な種。
流れのない田んぼや湖、流れのゆるい川辺などを好み生息します。
ヤンマ科の中では最も生息域が広く、よく見かけるトンボですが、高知県や長野県では準絶滅危惧種に指定されています。
ちなみギンヤンマの名前の由来は、オスのお腹の付け根が銀色であるところから由来しているといわれています。
シオカラトンボ
赤とんぼ、オニヤンマと並ぶほどの知名度を持つシオカラトンボ。
日本全土に生息し、都市部でも生息している事からトンボの中でも最も目にするトンボなのかも知れません。
シオカラトンボはオスとメスで体色が違います。
メスは黄色の体色に黒色の斑点があり、その見た目からムギワラトンボ(麦藁蜻蛉)とも呼ばれます。
CC BY 3.0/Philipp Weigell
オスの体色は成長するにつれて黒くなり、徐々にお腹周りが白い粉に覆われていきます。
この白い粉を『塩』に見立ててシオカラトンボの名が付いたといわれています。
名前が『塩トンボ』ではなく『塩辛トンボ』なのは謎ですね。
ショウジョウトンボ
日本全土に生息するトンボ科のトンボ。
体色はオスとメスで違い、オスは全身が鮮やかな赤で複眼まで真っ赤になっています。
CC BY-SA 4.0/Laitche
対してメスは控えめな全身茶色。
オスは縄張り意識がとても強く、縄張りである池の周りをグルグルとパトロールをします。
他のオスが縄張りに近づくと、にらみ合いが始まり、時には羽音を立てて争う事もあるようです。
また、同じく全身が赤いベニトンボと見た目が似ていますが、ショウジョウトンボの翅は赤くないのでそこで見分けることが出来ます。
ムカシトンボ
日本全国に分布する日本固有の種。
翅は均等亜目に似ていて、胴体は不均等亜目の特徴に似ています。
CC BY-SA 2.5/Daiju Azuma
トンボの系統は均翅亜目から不均翅亜目に分岐したと考えられていて、両方の特徴を持つムカシトンボは2つの亜目の祖先的なトンボだと考えられています。
また、太古の時代からその姿がほとんど変わっていない事から『生きた化石』とも呼ばれています。
綺麗なトンボ
日本に存在する色々な色を持った綺麗なトンボを見ていきましょう。
ベニトンボ
ベニトンボは沖縄を含む九州各地に分布しているトンボ科のトンボ。
大きさは4cmとさほど大きくはなく、湿地などを好んで生息しています。
CC BY-SA 2.0/Charles Lam
ベニトンボの特徴は、派手な体色と羽。
上記の画像はベニトンボのオスですが、羽・体・複眼に至るまで赤紫色をしていてとても綺麗です。
派手なオスに対して、メスは成虫になるとオレンジ色になります。
CC BY-SA 4.0/Jeevan Jose
綺麗なベニトンボの姿を一度はこの目で見てみたいものですね。
ハグロトンボ
ハグロトンボはカワトンボ科のトンボで、別名ホソホソトンボ。
体長は5cm〜6cmとやや大型です。
ハグロトンボもオスとメスで体の色に違いがあり、オスは黒く、緑色の光沢を持っています。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
メスの体は黒褐色で、翅も黒色と全身黒づくめです。
CC BY-SA 3.0/Tennen-Gas
翅はオス、メス問わず黒色。
ハグロトンボの名前は翅が黒い事から羽黒トンボと名が付けられたとか。
またメスは『神様トンボ』と言われおり、とても縁起のいいトンボだとされています。
リュウキュウハグロトンボ
リュウキュウハグロトンボはカワトンボ科のトンボ。
ハグロトンボと似ていますが、分類上ではあまり近くありません。
CC BY-SA 4.0/Keisotyo
リュウキュウハグロトンボはその名の通り沖縄県や奄美大島に分布します。
ハグロトンボと見た目が似ていますが、ハグロトンボより翅が大きく、光沢を持っています。
沖縄県では成虫の姿を2月から12月下旬とほぼ1年を通して見ることが出来ます。
チョウトンボ
青紫の綺麗な翅を持つチョウトンボ。
前翅は細長く後ろ翅は幅が広くなっていて、翅の形は蝶の様です。
青紫の翅は強い光沢を持っていてとても綺麗なんだとか。
この綺麗な翅を使いヒラヒラと蝶のように舞う事からチョウトンボの名が付いたとされています。
触覚があったらほぼ蝶と見た目は同じです。外で出会っても蝶と見間違えていまいそうですね…
アオイトトンボ
北海道〜九州北部に生息するアオイトトンボ科のトンボ。
名前はアオイトトンボといいますが、オスの体色は青くはなく、どちらかといえば灰色。
全体的に黒褐色で所々白くなっています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
メスは少し緑色が混じった黒褐色。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
アオイトトンボの最大の特徴は複眼の色。
オスは名前の通り綺麗な青色の複眼を持っています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
一方メスは茶褐色の複眼を持ちます。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
目が綺麗な青色をしているなんとも神秘的なトンボです。
カラフルなトンボ
アオモンイトトンボ
アオモンイトトンボはイトトンボ科のトンボ。
オスの腹部の両端が綺麗な空色をしている事が和名の由来になっています。
アオモンイトトンボの体色は少し特殊でオスと同じ体色の『同色型』のメスと、色が違う『異色型』のメスが存在します。
同色型のメスはオスとほぼ同じで交尾をしていてもどちらがメスかわかりません。
それに対して異色型のメスは全体的に茶褐色になっていて全く違う体色を持ちます。
アオモンイトトンボのメスは同色型と異色型の2タイプに分かれることで、メスとオスの区別が付きづらくなりオスから交尾を執拗に迫られる事が減ります。
その結果、集団での増殖性や安定性が高まり、絶滅のリスクが低減しているようです。
セスジイトトンボ
セスジイトトンボは日本全国に生息するイトトンボ科のトンボ。
オスの体色はアオモンイトトンボと似ていて、腹部が空色になっています。
セスジイトトンボもアオモンイトトンボと同様に同色型と異色型のメスが存在します、
異色型は青色の部分が緑色になっています。
オスはお腹の下が全体的に青く、節々も空色をしているので、そこでアオモンイトトンボと見分けることが出来ます。
ホソミオツネントンボ
ホソミオツネントンボは成虫のまま冬を越すちょっと変わったトンボ。
体は名前の通り細く、冬は茶色の体色のまま越冬します。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
冬を越し春が来ると徐々に体色は変化していき、青色に変化します。
青色の体色に黒いマダラ模様が入る少し変わった姿をしています。
日本では北海道〜九州にかけて生息しています。
キイトトンボ
キイトトンボは名前の通り体色が黄色になっています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
メスもオスと同様に黄色い体色を持ちますが腹部は少し緑色を帯びます。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
鮮やかな体色持つキイトトンボは2014年に大阪府で準絶滅危惧種に指定されています。
しかしトンボとは思えないほど派手な色ですね…
モノサシトンボ
腹部の節に等間隔の環状紋があり、モノサシの様に見えることからその名がついたモノサシトンボ。
体長4cm〜5cmでイトトンボ亜目の中では比較的大型。
オスのモノサシトンボは全体的に水色の体色を持ち、背中から後頭部にかけて黒くなっています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
メスは黄緑色の体色で、背中から後頭部にかけて黒くなっています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
オス、メスどちらもモノサシの様な模様を持っています。
絶滅が危惧されているトンボ
ハラビロトンボ
名前の通り腹部が太く、ボテっとしている印象を受けるトンボ。
体長も3〜4cmと小型な為、トンボらしくない寸胴な体型をしています。
CC-BY-3.0/mojimojisan
メスは黄色を基調とした体色に茶褐色の模様が入っていて、特にメスは腹部が幅広くなっています。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
メスの体色は黄色を基調としているのに対しオスは、黒色に白い粉を纏っています。
シオカラトンボとその姿は似ていますが、分類上はシオカラトンボ属には含まれていません。
CC-BY-3.0/mojimojisan
日本全国に分布しますが北海道、青森、千葉、東京などでは絶滅が危惧されています。
ニホンカワトンボ
ニホンカワトンボはカワトンボ科に属するトンボ。
名前の通り日本に生息、流れの緩い川や、川辺を縄張りとして生息しています。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
体色は光沢が強く、青緑色のメタリックな見た目をしています。
また、ニホンカワトンボの翅の色は3種類存在。
橙色、薄い橙色、無色の3つ。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
見られる地方で翅の色が違うもののメスの個体は薄い橙色か無色かの2タイプだけの様です。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
ニホンカワトンボは東京都ではほとんどの区で絶滅。宮崎県、愛媛県、静岡県、鹿児島県などでは絶滅危惧種に指定され、他6県でも準絶滅危惧種に指定されるなど絶滅が懸念されています。
マダラヤンマ
名前の通りマダラな体色を持つマダラヤンマ。
体長6〜7cmとヤンマ科の中ではそこまで大きくはありません。
オスは黒褐色の全身で、青色がマダラに入っています。
CC BY-SA 4.0/Andreas Eichler
メスはオスよりも色が明るく、茶褐色に薄い緑色がマダラに入っています。
マダラヤンマのメスは関東で一番採集難易度が高いと言われています。
東京では絶滅しており、栃木県、長野県では天然記念物に指定されています。
ナニワトンボ
大阪で最初に見つかった事から名が付いたとされるナニワトンボ。
赤とんぼ属(アカネ属)のトンボなのに赤くならないトンボとして知られます。
オスは複眼を含む全身が青白いのが特徴的です。
メスは黄色の体色に黒色の模様をもちオニヤンマとその姿が似ています。
ナニワトンボは年々減少傾向にあると考えられ、絶滅危惧種II類に指定されています。
赤とんぼなのに青色になる不思議なトンボですね。
最小のトンボ
ヒメアカネ
可愛らしい名前を持つヒメアカネは、体長2.8〜3.8cm程しかなく、アカネ属の中で最小の種です。
オスは赤とんぼ同様の見た目をしています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
ヒメアカネのメスは茶褐色の体色で胸から腹部にかけて黄緑色をしています。
CC BY-SA 4.0/Alpsdake
ヒメアカネの名はアカネ属の中で最小である事から由来しているといわれています。
ハッチョウトンボ
日本最小のトンボであるハッチョウトンボ。
世界的にみても最小の部類に入ります。
CC BY-SA 4.0/Yasunori Koide
オスメス共に体長は1.7cm〜2cm程しかなく非常に小さいのが特徴です。
オスは赤とんぼの様な赤色の体色に、赤色の複眼が特徴的です。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
対してメスは茶褐色に黄色と黒の模様が入っています。
CC BY-SA 3.0/Alpsdake
赤とんぼの様に赤い体を持っていますが、分類上はアカネ属ではなく、ハッチョウトンボに属するトンボです。
名前の由来は矢田鉄砲場八丁目で発見された事から来ているとされています。
現在の場所でいうと名古屋の矢田川付近で発見されていたようです。
5円玉より小さいトンボがいるとは驚きですね。
最大のトンボ
ハビロイトトンボ
ハビロイトトンボは中南米に生息するトンボ。
名前の通り翅が大きく、翅を開いた時の大きさは19cmにも及び、トンボの中では最大の翅を持ちます。
CC BY-SA 3.0/Steven G. Johnson
大きな翅を持ちますが、意外な事に長い距離を飛ぶ事が出来ません。
そのため生息地も広がる事はなく、狭い範囲に限られています。
またハビロイトトンボが飛んでいる姿は「青と白に瞬くビーコンのよう」だと例えられます。
テイオウムカシヤンマ
ムカシヤンマ科のトンボの一種。
オーストラリアのクイーンズランドなどに生息します。
テイオウムカシヤンマはトンボの中で世界最大の体長を持ち、その大きさは最大で16cmにも及ぶといわれています。
日本原産の最大種であるオニヤンマと比べても倍近く大きさを誇ります。
テイオウムカシヤンマについては詳しい生態などはわかっておらず、謎が多く『幻のトンボ』と呼ばれます。
また、ムカシヤンマと同じ様に『生きた化石』とも呼ばれます。