【キリギリス】螽斯の鳴き声と知られざる生態!バッタとの違いも解説

季節感のある鳴き声で秋の季語としても用いられるキリギリス。
イソップ寓話『アリとキリギリス』などにも登場する昆虫です。

今回はキリギリスの鳴き声と知られざる生態・見た目が似ているバッタとの違いについて見ていきましょう。

キリギリス(螽斯)とは

キリギリス(螽斯)とはバッタ目キリギリス科キリギリス属の総称。
日本にいるキリギリス属の昆虫、近縁の昆虫もまとめて『キリギリス』と呼ばれています。
また別名として『機織虫(はたおりむし』『機織女(はたおりめ)』『ぎす』『ぎっちょ』などと呼ばれます。

褐色のキリギリス

日本においては秋の季語としても使われているキリギリス。日本では東北地方から九州地方まで分布しています。

キリギリスの特徴

長い触覚と、細く長い後ろ足が特徴的なキリギリスは成虫になると頭から翅までで24mm〜40mmまで成長します。

キリギリス

体色は緑色を基調にした個体と褐色を基調としている個体が存在しており生活環境、種の違いで体色は異なります。

キリギリスの鳴き声

キリギリスは真夏の河原や草原、山間部などの茂みの中に潜み大きな声で鳴きます。

キリギリスは別名『ぎっちょ』などとも呼ばれており、鳴き声は『ギー』『チョン』と鳴くとよく例えられます。

また鳴くのは雄のみで、前翅を擦り合わせ鳴き声を出す事ができる仕組みになっています。

キリギリスの生態

草原や山間部などに生息しているキリギリスは面白い生態を持っているようです。

意外と雑食

キリギリスは縄張り意識が強く、成虫になると縄張りに侵入してくる同じキリギリスやキリギリス近縁の種に対し激しく攻撃を仕掛け、捕食します。
時には同じバッタ目の小型の個体や共食いもする雑食っぷり。

葉の上のキリギリス

キリギリスが共食いなどをするのは意外に感じますよね。
ですが、キリギリスは動物性たんぱく質を摂取しないと幼虫はうまく成長できず、メスは産卵に支障をきたします。
また、飼育下において動物性たんぱく質を与えず、植物性の餌を与え続けると突然死したりするそうです。

動物性たんぱく質はキリギリスにとって重要な栄養なんですね。

死んだフリをして逃げる臆病者

キリギリスは丈の長い草などに登って鳴く習性を持っていますが、危険を感じると死んだフリをして地面に落下します。

落下すると周囲にある落ち葉の下に潜ってみたり、茂みの中に深く、下へ下へと逃げる性質を持っています。

落ち葉

臆病なため無闇に飛び跳ねて姿を現すこともなく、足音などがすると鳴くのをやめるため、採取は難易度が高いようです。

キリギリスの種類について

キリギリスは生息地ごとに様々な特徴を持っており、1997年東日本と西日本で分けられました。

東日本に生息するキリギリス達を『ヒガシキリギリス』。西日本に生息するキリギリス達を『ニシキリギリス』と分類。

またこの中でも特徴が違う種が存在していますが、分類に必要な研究、解析が十分に進んでいない為未解明の部分が多く、種の分類については未だに結論が出ていないようです。

キリギリスとバッタの違い・見分け方は?

キリギリスとバッタは同じバッタ目に属する昆虫。
キリギリスはバッタの仲間ですが、2種の見た目を比べると特徴がそれぞれ違います。

キリギリス、バッタの画像と共に比べてみましょう。

・キリギリス

キリギリスを横から見た

・バッタ

バッタ

キリギリスはバッタと比べ触覚が長く、後ろ脚が長いのが特徴です。産卵管はキリギリスの方が発達しており、刀のような産卵管が長く伸びています。
また前脚の棘はバッタと比べキリギリスの方が大きくなっています。
キリギリスは雑食性があるため獲物を逃さないように前脚の棘が発達しています。

見分け方は触覚の長さと、後ろ脚の長さで見分けがつきますね。

キリギリスは江戸時代から飼育されていた

キリギリスと人の関わりは古く江戸時代には観賞用として販売、飼育されていたようです。
コオロギを除いて鳴く虫として代表的であったキリギリスの鳴き声、は江戸の夏の風物詩として親しまれていました。

草の上のキリギリス

現在でもその風習は残っていると言われており、伝統的娯楽としてキリギリスを飼育する地域が関東にあると言われています。

ペット、鑑賞用として飼育されていたのは意外でしたね。

イソップ寓話『アリとキリギリス』の本当の話

キリギリスが登場するイソップ寓話『アリとキリギリス』。
あらすじは、アリは夏の間に冬の食料を確保する為に働き続けますが、キリギリスはヴァイオリンを弾き歌って過ごすばかり。
時が過ぎ冬が来るとキリギリスは食料が無いためにアリを頼ります。
アリはキリギリスを可哀想に思い食料を分け与え、キリギリスはそれを機に改心し、働くようになる。

というのがよく日本で普及している結末で改変された結末です。

キリギリスの子供

本来は頼るキリギリスに対し、アリは餌を与えず『夏の間歌っていたんだから、冬は踊ったらどうだい?』と捨てゼリフを吐き、キリギリスは『歌うべき歌は、歌いつくした。私の亡骸を食べて、生きのびればいい。』といってキリギリスは餓死してしまうという物語。

キリギリスは短い寿命でやりたいことはやって後悔しない様に生き、アリは生き延びる為に働くというもの。

この物語からは教訓として後先を考えずに生きていると後で困る。それぞれ幸せの尺度は違う、色々な生き方があるなどの教訓が読み取れますね。

人生について考えさせられる深い物語です。