【キンシコウ】金色のサルは孫悟空のモデル?生態と日本にいる動物園は?

青い顔に黄金の毛を持つサル『キンシコウ』。
その見た目から孫悟空のモデルではないかと言われていたサルとして有名です。

特徴的な見た目から『中国三大珍獣』の一つとしても知られるキンシコウの生態や特徴、日本で見ることの出来る動物園などを紹介していきます。

キンシコウとは

キンシコウは哺乳綱霊長目オナガザル科シシバナザル属に分類される霊長類。

キンシコウは漢字で書くと『金絲猴』。
中国では「チン・ス・ホー」と読み、日本ではキンシコウと読みます。

キンシコウが振り返っているCC BY-SA 2.0/Jack Hynes

明るい毛と小さい鼻を持つことから、キンシコウは別名『ゴールデンモンキー』『チベットコバナテンクザル』などとも呼ばれます。

キンシコウは中国三大珍獣の一つとしても知られており、中国国家一級重点保護野生動物に指定されている希少な動物です。

キンシコウの特徴

キンシコウは体長約53〜70cm、尻尾の長さは約56cm〜72cm。
体重はオスとメスで大きく差があり、オスは約13kg〜20kg超えの個体がいるのに対し、メスは約9kg〜13kg程しかなくその差は2倍ほどにもなります。

キンシコウの骨格標本CC BY-SA 2.5/OpenCage

体長もオスと比べると一回り程小さい印象ですが、尻尾はオス、メス共に体長と同じくらいの長さがある為大きな尻尾が特徴的です。

黄金の毛

キンシコウの特徴と言えば見た目にも美しい体毛。
茶褐色やオレンジ色にも見える美しい毛は、太陽の光に当たると角度によって黄金の様にキラキラ輝きます。
別名の『ゴールデンモンキー』は黄金の様にキラキラ輝く毛から由来したのだとか。

キンシコウの金色の毛CC BY-SA 2.0 DE/Eva Hejda

金色の毛は、全身くまなく生えている訳ではあまりません。
顔の辺りはほとんど毛は生えておらず、腹部に近づくと白っぽい色合いになっています。
また、オスとメスでは毛の色に少し違いがあり、オスは背中からお尻にかけて少し灰色っぽくなり、メスは黒っぽくなっています。

産まれたばかりのキンシコウは白い毛をしていますが時が経つにつれ黄金の毛へと変わっていきます。

青い顔と特徴的な顔立ち

次に特徴的なのはかなり個性的な顔。
キンシコウの顔は青色や水色っぽい色をして少し不気味です。

キンシコウが振り返っているCC BY-SA 2.0/pelican

キンシコウの顔の中でも特徴的な鼻は、潰れている様に見え、鼻孔は目の近くで上を向いて開いています。
成熟したオスは口の横にイボが出来て、長い犬歯がが生えます。イボはメスには無く、犬歯はメスの方が短いためメスとオスでは犬歯の長さが違います。

特徴的な青い顔に黄金の毛というなんとも言えない色合いはすごく幻想的です。

キンシコウの生態

キンシコウの基本的な生態について見ていきましょう。

キンシコウ生息地

キンシコウは中国中西部やチベットに分布しています。
キンシコウはその中でも標高1500m〜3000m高山地帯の落葉広葉樹林や針葉樹に生息しています。

キンシコウの生息地CC BY-SA 3.0/Vmenkov

生息地は標高が高いためとても寒いのですが、金色の毛の断熱効果により体温を逃さず生息できている様です。
また、キンシコウはヒトを除く霊長目で最も寒い地域に住む動物として知られています。

キンシコウの食性

キンシコウの食性は雑食。
基本的には植物の葉などを食べて生息する草食寄り。植物の他には樹皮や果実、昆虫や鳥類の卵なども食べて厳しい冬を耐え凌いでいます。

キンシコウは群れて行動する

サル科の動物はほとんどが昼行性でキンシコウも主に日中活動します。
ただ単独行動はせず、基本は群れを成して行動します。

2頭のキンシコウCC BY-SA 3.0/Danielinblue

一頭のオスと数頭のメス、子供で群れは形成されます。
この群れは他の群れと合流して大きな群れになることもあるようで、稀に300頭ほどの大群を形成することもあるとか。
300頭もの大群を成すのは霊長目としてはキンシコウのみです。

また、群れ同士が同じエリアで対立した場合、お互いの群れ同士が違う方向へ向かい、争いを避ける様子が記録されています。
キンシコウの争いを好まない性格が見えますね。

キンシコウは赤ちゃんが好き

最新の研究でキンシコウの母親は自分の子供だけではなく、よその子供にもお乳をあげ、面倒を見る様子が報告されています。

キンシコウの親子CC BY-SA 2.0/ Giovanni Mari

よその子供の面倒を見る動物は哺乳類の中では約40種類ほどしかいないので一般的ではなく、研究者も予想していなかった様です。
というのも母乳をあげる行為は、かなりのエネルギーを必要としていて、出産の次にエネルギーを使うと考えられているからです。

また、記録によると約87%の赤ちゃんが他の母親からお乳をもらっている様で、キンシコウ達の中では母親以外からお乳を貰うのは当たり前の様ですね。

キンシコウは悟空のモデル?

キンシコウといえば西遊記の『孫悟空』のモデルだとよく言われています。
たしかにキンシコウは孫悟空の様にジャンプ力があり、長い尻尾を持っていますが、金色の毛に青色の顔を持つキンシコウに対し、作中の孫悟空は体毛が白く目は金色です。

キンシコウの毛づくろいCC BY-SA 3.0/J. Patrick Fischer

実はキンシコウが孫悟空のモデルであるというのはデマだった様です。
デマである『キンシコウが孫悟空のモデル』が広まった理由は、雑誌『アサヒグラフ』の記事で日本モンキーセンター世界サル類動物園長が『キンシコウが孫悟空のモデルではないか』の発言で広まったとされています。

園長は別記事にて『勘違いだった』と訂正していますが後の祭り。キンシコウは孫悟空のモデルだという認識が広まってしまったようです。

MEMO
ちなみに孫悟空のモデルはマカク属のアカゲザルである可能性が高いと言われています。
西遊記の作中の描写はアカゲザルの特徴的な生態が描かれているのだとか。

キンシコウは絶滅危惧種

現在キンシコウは絶滅危惧種としてレッドリストに指定、またシシバナザル属単位でワシントン条約に掲載されており、国際的に保護されています。

キンシコウの顔アップCC BY-SA 4.0/PieCam

キンシコウ絶滅危惧種の原因はトラやヒョウ、ワシなどの外敵によるものもありますが、一番の原因は人間です。
人間が及ぼすキンシコウへの影響は農地などの開発による生息地の減少や環境破壊。
他にもキンシコウの美しい毛はコートなどに利用され、肉や骨は漢方薬に使用されるため密猟、乱獲が後を絶たず生息数が減少しています。

そのため生息地の中国でも『中国国家一級重点保護野生動物』に指定、保護されています。

日本で飼育されているは熊本動植物園のみ

キンシコウは神戸市立王子動物園や東山動物園・金沢動物園・熊本市動植物園で飼育下の繁殖に成功しています。

ですが現在は動物園飼育されていたキンシコウはほとんどが中国に返還されています。
そのため日本で飼育されているのは唯一『熊本市動植物園』のみとなっています。

現在、熊本市動植物園ではオス2頭、メス3頭のキンシコウが飼育されています。

滅多にお目にかかれない希少な動物ですので、熊本に訪れた際は足を運んでみてはいかがでしょうか。