糞を転がす事で知られる『フンコロガシ』。
小さな子供から大人までその存在を知っている方も多い昆虫です。
有名な昆虫ですが、フンコロガシがなぜ糞を運ぶのか知らない人がほとんどでしょう。
今回は、エジプト神話の虫フンコロガシの生息地や生態、なぜ糞を転がすのか、日本には生息しているのかを紹介していきます。
フンコロガシとは
フンコロガシとは文字通り糞を転がす虫。
その特異な生態から付いた名が『フンコロガシ』なのですが、実はフンコロガシという名前の虫は存在しません。
フンコロガシは甲虫類コガネムシ科の『スカラベ』の俗称として呼ばれています。
このスカラベは単独の種ではなく、コガネムシ科の中で哺乳類の糞を餌とする者を指します。
スカラベはコガネムシ科の昆虫らしい見た目で、テッカテカの光沢を持ち、黒や黄金色の体色をしています。
今回はスカラベではなく、馴染みの深い『フンコロガシ』の名で紹介していきます。
フンコロガシの生息地
フンコロガシの主な生息地はアフリカの砂漠とその周辺です。
コガネムシ科の昆虫は南極大陸と海を除いた地域に分布していますが、糞を転がす種はあまり多くありません。
日本でも一部の地域では生息しているとされていて、世界の各地でもその姿を確認できます。
フンコロガシの生態
フンコロガシは名前の通り、『糞』を転がす不思議な習性を持っています。
主な食料ともなっているのですが、糞であればなんでもいい訳ではなく、主に牛や鹿などの草を主食とする哺乳類の糞を集めます。
新鮮な糞を見つけると、頭の突起を巧みに使い糞を適当な大きさに切り取りとった後、後ろ足で球形に整えながら前足で糞を付け足します。
ひたすら足しては丸めてを繰り返し、適度な大きさになると逆立ちの状態になり、後ろ足で糞を転がして安全な場所まで移動し食事をします。
時には運んでいる途中で他のフンコロガシに糞を横取りされる事もあるとか…
なぜ糞を転がして集めるの?
フンコロガシが食料である糞をわざわざ運ぶ理由の一つは安全に食べるため。
その場で食事をすると、天敵の鳥や爬虫類などの目につき、狙われてしまう危険があります。
食事中はただでさえ隙が多くなるので、とても危険です。
また食料を求めて集まってきた他の虫たちとの争奪戦が始まってしまい、食料を確保出来ない可能性もあります。
もう一つの理由は、繁殖活動のため。
フンコロガシは持ち帰った糞の中に小部屋を作り、メスはその中に卵を産み付けます。
卵はやがて孵り、幼虫になると糞玉の内部を食べ成長し、一年ほど経つと成虫になって出てきます。
フンコロガシは糞を食べるためだけに集めているのではなく、子育てにも使っていたようですね。
フンコロガシのもたらす良い効果
糞を餌とするフンコロガシは様々な面で良い効果をもたらしています。
牛などの大型の哺乳類の糞を餌とするフンコロガシは糞を分解する上で重要な存在だといわれています。
その効果は大きく、過去にはオーストラリアで、糞を処理しきれないためにフンコロガシなどの糞虫を導入したとか。
また、糞に含まれる植物の種子が埋められる事によって、植物は様々な場所に繁殖することができます。
糞を運び、植物が生え、それを食べた哺乳類が糞をする完全な循環になっています。
植物などの生態系を守る上でなくてはならない存在です。
エジプトでは神の様な存在
糞の処理に一役買っているフンコロガシですが、古代エジプトの時代には神の虫と崇められていました。
フンコロガシが運ぶ丸い糞を太陽に見たてて、太陽の神である『太陽神ケプリ』であると考えられていました。
CC BY-SA 4.0/Jeff Dahl
顔がフンコロガシの形をしているへんな神様ですね。
この太陽神ケプリは『太陽神ラーの』形態のひとつで、日の出を意味しています。
エジプト神話の中で太陽は復活、再生の象徴だとされており、古代エジプトでは聖なる虫として崇拝されていたようです。
また実際にエジプトの壁画などにはフンコロガシ(スカラベ)の絵が描かれています。
糞を転がすフンコロガシがエジプト神話の中で崇められていたとは驚きですね。
フンコロガシは日本いる?
フンコロガシの様に糞を食べる昆虫は日本だと宮城県、奈良県、広島県などに多く生息しています。
その内糞を転がすのは奈良の奈良公園に多く生息する『マメダルマコガネ』の一種のみ。
このマメダルマコガネは体長3mm程しかないので、見つけるのはかなり難しいとか。
また奈良公園では『ルリセンチコガネ(オオセンチコガネ)』が、瑠璃色のとても綺麗な体色を持っていて有名なのですが、糞を転がす事は無いようです。
フンコロガシやスカラベは綺麗な形・色を持っているものも多く、コレクターなどに人気のある昆虫です。
糞虫の多くが生息する糞虫の聖地奈良県では、『ならまち 糞虫館』なるものがあります。
この施設の中では世界中の糞虫たちが展示されているのだとか。
興味がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。