自然に生きる動物・昆虫達は、自然を生き抜く為に周りの景色に紛れ、天敵などから身を守ります。
生態系において弱い位置にいるナナフシは、生き抜く為の擬態がとっても得意。
なんでも、産んだ卵まで擬態してしまうとか。
今回は、擬態の天才『ナナフシ』の面白い生態・ナナフシモドキについて・擬態する卵・日本に生息するナナフシの種類を紹介していきます。
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ナナフシとは?
ナナフシとは世界中の温帯・熱帯地域に生息する昆虫のこと。
節足動物門のナナフシ目に属する昆虫の総称として呼ばれています。
細長い体を持ち、木の枝の様に体に節があるナナフシは擬態がとても得意な昆虫です。
ナナフシを漢字で表すと『七節』『竹節虫』ですが、これは体の節が7つあるからではなく、たくさんの節を持っている事からその名が付いたとか。
実際にナナフシの持っている節は、7つよりも多い種がほとんどようです。
また『竹節虫』に関しては、中国語に由来した漢字です。
見た目が竹の小枝の様に見えることからその名が付いたそうです。
ナナフシの生態
ナナフシの面白い生態についてみていきましょう。
擬態の天才
ナナフシといえばやはり『擬態』のイメージが浮かびます。
細く長い体で、所々に節を持つナナフシは木の枝などによく擬態して、捕食者から身を守ります。
種類によっては体色の違いもあるので、茶色の木の枝だけてではなく、緑色の葉っぱに擬態する者もいます。
卵も植物の種の様に見えるという擬態に対しては徹底的な昆虫なのです。
トカゲの様に脚を切って逃げる
トカゲの様に体の一部を犠牲にして逃げるのはどうやらトカゲだけではないようで…
種類にもよりますが、ナナフシは襲われた際に自らの脚を切り落として逃げるいわゆる『自切』を行う種が多いようです。
自切の際に切り落とした脚は、幼虫や成長途中の若い年齢の個体だと、脱皮と共に生えてくるようですが、ある程度成長した段階では再生される事は難しく、成長が終わりに近い個体だともう元に戻る事はありません。
自切する行為を考えると脚はあまり必要ないのかな?なんて思いますよね。
一説によると、ナナフシの脚はもともとは6本ありますが、最悪でもそのうち3本の脚が残っていれば生きいていけるのだとか。
ナナフシは脚が3本でも生き抜ける強い力を持つ昆虫ですが、脚が6本ある時の力はとても強く、自分の重さの40倍の物を運ぶ事ができるそうです。
ナナフシの脚が持つ力は、ロボット分野で研究され、『ナナフシモデル』と呼ばれる6脚ロボットなども開発されています。
ナナフシの卵
ナナフシの卵は種類によって、色も形も様々です。
しかし、いずれも殻は非常に硬く、形態は植物の種子のような形をしています。
CC BY-SA 3.0/Drägüs
ナナフシの卵は植物の種子に擬態する事で、鳥に食べられます。
普通の考え方だと、鳥に食べられたらそれでおしまいですが、ナナフシの卵は非常に硬いため消化される事無く糞に紛れて出てくるのだそうです。
ある研究では、食べられた70個の内2個の卵が孵ったとか。
ナナフシは翅などを持つ種があまりおらず、移動も得意ではない為、生息域を広げることは難しいと考えられてきました。
しかし、研究では鳥によって生息域が広がった可能性があるという非常に面白い研究結果が出ています。
捕食者に運ばせるという発想は、なかなか思い浮かばない手ですね。
ナナフシモドキについて
ナナフシはナナフシ目の昆虫の総称ですが、ナナフシモドキとは一体なんなのでしょう…
名前から察するにナナフシの出来損ない?みたいなイメージが思い浮かびますよね…
でも実際は違いました。
『ナナフシモドキ』はナナフシ亜科に属する虫の名前です。
この虫の標準和名がナナフシモドキなのですが、通称では『ナナフシ』と呼ばれる事が多いようです。
ではなぜ『モドキ』が付いたのでしょう…
そもそも標準和名が『ナナフシ』である昆虫は存在しません。
『モドキ』という言葉から、何かしら足りないイメージを持ちますが、見た目も他のナナフシとあまり変わらない姿をしています。
実はナナフシは漢字で表すと『七節』となり、木の枝の事を指すのだそう。モドキは『似ている、似せている。』と言う意味をもちます。
ということで枝に擬態するその様子になぞらえて、ナナフシモドキの名が付いたということです!
ナナフシモドキだけがナナフシと呼ばれる理由はわかりませんが、恐らくはよく目にするナナフシの一種だったからだと考えられます。
ナナフシの種類
全世界には約2500種類のナナフシが生息していると言われています。
その内18種類が日本でも確認されています。
一部ではありますが、日本に生息するナナフシの生息地や見た目の特徴などを簡単に紹介します。
コブナナフシ
コブナナフシは九州、沖縄県などに生息します。
灰色や茶色の体色が多く、緑の体色を持つ個体は少ないようです。
体に凹凸が多くゴツゴツしている印象です。
ナナフシモドキ
ナナフシモドキは日本の一般的なナナフシ。
本州・四国・九州に分布します。
CC BY 2.1/あうる
オスの数が少なく、メスのみで繁殖する『単為生殖』を行う種です。
緑や茶褐色の体色で細長い体をしているので、木や植物の枝に擬態している事が多いようです。
エダナナフシ
エダナナフシは本州・四国・九州の山野に生息しています。
ナナフシモドキと形も体色も似ています。
ですが、ナナフシモドキより触角が長い様なので、触角で見分ける事が出来ます。
イシガキナナフシ
名前の通り石垣島・西表島に生息するナナフシ。
見た目はナナフシモドキと似ていますが、体は一回り以上大きいのが特徴的。
なんでもナナフシモドキの倍くらい大きいとか…
オキナワナナフシ
沖縄県や奄美大島などに生息します。
主に木の枝などに擬態して過ごしています。
現地では別名『ソーローンマー』などと呼ばれています。
ニホントビナナフシ
本州〜九州・沖縄に生息するナナフシ。
体が太く短い翅を持っているのが特徴的。
CC BY-SA 3.0/Drägüs
主に単為生殖を行いますが、屋久島以南では両性生殖も行うようです。
シラキトビナナフシ
北海道・本州・四国に生息するナナフシ。
背中は直線状に赤紫色のラインが入っているのが特徴。
短い翅を持ちますが飛ぶ事は出来ません。
オスは確認されておらず、メスの単為生殖のみで繁殖しています。
タイワントビナナフシ
主に九州・南西諸島に分布するナナフシ。
稀ではありますが本州の一部地域にも生息しています。
明るい茶褐色の体色をしています。
ヤスマツトビナナフシ
本州・四国・九州に生息します。
他のトビナナフシと違い、体に色が違う部分がない。
体全体が緑色一色のトビナナフシです。
トゲナナフシ
本州〜沖縄に生息します。
CC-BY-SA-3.0KENPEI
体は黒みが強い茶褐色で、名前の通り体中にトゲを持ちます。
オスは確認されておらず単為生殖を行います。
ヤエヤマツダナナフシ
日本では西表島・屋久島に生息します。
背中から翅にかけて黄色や明るい緑色をしています。
体長は12cm程で非常に大きいナナフシです。
アマミナナフシ
沖縄県や奄美大島などに生息します。
薄い茶色や黄色い体色など明るい体色を持ちます。
体長は12cm〜14cm程で日本で一番大きいナナフシです。
実は世界一長い昆虫
2008年頃に発見された『チャンズ・メガスティック』は、ナナフシの中でも最大の大きさと長さを誇る新種です。
CC BY 3.0/P.E. Bragg
チャンズ・メガスティックの体長は昆虫界最長で、最大全長は55cmにもなるとか…
実物は大きすぎて気持ち悪そうですね。出来れば出会いたくないナナフシです。