口角が上がっている事が多く、まるで顔が笑っている表情に見えるため、とても愛嬌がある顔のスナメリ。
今回はスナメリとイルカとの見た目の違いや、シロイルカとの見分け方などを紹介します。
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スナメリとは
スナメリ(学名:Neophocaena phocaenoides)(英名:Finless Porpoise)は、ネズミイルカ科スナメリ属に属する小型のイルカ。
体長は成体で1.5m〜2m、体重は50〜60kg。クジラの中でも最小種の一つです。
スナメリ属はスナメリ1種類のみで構成されています。
主に海水域に生息していますが、中国の長江(揚子江)などの淡水域での生息も確認されています。
中国では、長江の豚と言う意味で江豚(jiangtun)と呼ばれています。
また、日本では地域によって呼び方に違いがあります。
仙台湾から東京湾では標準和名のスナメリ。
伊勢湾や三河湾ではスザメ・スンコザメ。
瀬戸内海から響灘ではゼゴ・ゼゴンドウ・ナメクジラ・デングイ。
大村湾、有明海、橘湾ではナミウオ・ボウズウオなどと呼ばれています。
スナメリの特徴・一般的なイルカとの違いを画像で見る
水族館などでよく見るイルカとの体の違いを画像を比較して見ていきましょう。
背ビレがない
水族館などでよく見るイルカショーなどのイルカにはこの様に背ビレがあるのをイメージすると思います。
ですが、スナメリには背ビレがありません。
また、スナメリの英名【finless Porpoise】は日本語に訳すと、『ヒレなしイルカ』。
英名の通り背びれがない事が特徴で見た目はシロイルカ(ベルーガ)に似ています。
背びれはありませんが背中の中心に沿って皮膚が2〜3cm程盛り上がっています。
この部分には終末神経が密集しているとされており、この器官で仲間とのコミュニケーションに使う感覚器官になっているのではないかといわれています。
口(クチバシ)が突き出ていない
イルカのイメージとして印象に強いクチバシですが、スナメリは口(クチバシ)が突き出ていません。
丸い前頭部が口から立ち上がっていて、一般的になイルカのイメージと違います。
この特徴はどうやら『ネズミイルカ科』全ての特徴の様です。
スナメリの生態
生息海域
スナメリは主にアジアの沿岸海域に生息しています。
生息海域は西はペルシア湾から東は富山湾にまで生息しています。
主に沿岸の海水域に生息していますが、中国の揚子江(長江)などの淡水域にも生息しています。
画像:玖巧仔
日本沿岸では瀬戸内海から紀伊水道にかけて最も多くのスナメリが生息しているとされています。
いずれの生息海域も水深が50cm程で海岸に近く、海底のがなめらか、砂地になっているところを好んで生息しています。
繁殖
繁殖期は地域によって異なります。
主に春から夏頃にかけて繁殖活動を行います。
スナメリは1産1仔。瀬戸内海における出産は4月によく見られ、生まれたばかりの子どもの体重は25kg程で、体長は80cm程度です。
妊娠は2年に一回が最も多いサイクルとされており、雄は4歳半から9歳で、雌は3歳から7歳で、それぞれ性成熟します。
スナメリはイルカなのかクジラなのか
スナメリもイルカも同じ鯨類に属しています。
生物分類上ではイルカとクジラの明確な違いはなく、呼び名が違うだけで同じクジラです。
イルカは主にハクジラ科の体長が4メートル以下の個体を指しています。
スナメリの体長は成体で1.5メートルから2メートル。
ですのでスナメリは生物の分類ではクジラ。大きさ的にはイルカの仲間です。
スナメリとシロイルカ(ベルーガ)の違いは?
見た目がとても似ているスナメリとシロイルカ(ベルーガ)。
フォルムも似ている両者の違いをみていきましょう。
生息海域
スナメリは日本やインド、中国などの比較的温かい海域に生息しています。
対するシロイルカは北極海やオホーツク海などの寒く浮氷がある海域に生息する傾向があります。
大きさ
スナメリは成体での体長1.5m〜2m程度です。
人と比べるとこれぐらいの大きさです。
シロイルカは成体で4m〜5mでスナメリと比べると、2倍以上の大きさです。
胸ビレの違い
胸ビレの形に大きな違いがあります。
スナメリの胸びれは長く、先端に行くほど細くなり先はシュッと尖っています。
シロイルカの胸ビレは短く先端が丸いのが特徴的です。
体色の違い
スナメリは水中では白っぽく見えますが、水面から出ると灰色の体色をしています。
シロイルカはその名前の通り体色は白。
ですが、シロイルカの赤ちゃんはスナメリと同じ灰色の体色をしているため、スナメリとシロイルカの赤ちゃんを見間違える事も多いようです。
スナメリは絶滅危惧種?
スナメリは絶滅の恐れがある種としてIUCNの絶滅危惧II類(VU)に指定されています。
個体数の把握はされていませんが、数十年間に渡って減少している考えられています。
また、食用や脂など商業目的での乱獲も行われていた為、商取引の原則禁止となるワシントン条約の附属書Iに掲載されています。
1930年には広島県竹原市にある阿波島の半径1.5キロほどの海域を「スナメリクジラ廻遊海面」として国の天然記念物に指定されています。