【イモガイ】猛毒注意!綺麗な貝殻に隠された毒性と日本にいる種類

夏になると海などに遊びに出る機会も多くなりますね。
海に遊びに行った際に、海岸などに打ち上げられた綺麗な貝殻を手にした事は誰しもあるのではないでしょうか。

ですが、もしかしたらその貝『猛毒』を持っているかもしれませんよ。

今回は陸空海最強の毒を持つとされている『イモガイ』の種類と恐ろしい毒性を紹介します。

イモガイとは

イモガイ(芋貝)はイモガイ亜科の貝類の総称、イモガイ上科の中でイモガイ型の貝殻を持った貝類の総称を指します。

20世紀末まではイモガイ型の貝殻を持つ『イモガイ科』の総称として使われていたようですが、クダマキガイの一部もイモガイ亜科として認められる様になったため、現在ではイモガイ上科の中のイモガイ型の貝殻を持つものの総称となったようです。

そんなイモガイは全世界で約500種類以上存在しているのだそう。

色々なイモガイ
画像:pet

イモガイの特徴はなんといっても名前にも付いているイモガイ型の貝殻。
この殻はほとんどの種で円錐型で入口が狭く、先が細くなっています。英名のcone shell (円錐形の貝)も円錐型の貝殻に由来しています。
また和名の『イモガイ』は貝殻の形が『サトイモ』に似ている事から由来していると言われていて、俗名の『ミナシガイ』は、貝殻からわずかに見える身に由来したとされています。

イモガイの生態

イモガイは全ての種が肉食性であるとされています。
肉食性の中でも魚食性、虫食性、貝食性に分けられます。
貝食性のタガヤサンミナシなどの種は巻き貝や、他のイモガイまでも食べてしまうといいます。
貝が貝を食べるのはイマイチ想像がつかない…

イモガイの仲間

イモガイは毒銛を巧みに使い捕食します。
この毒銛は歯舌(軟体動物の歯と舌の役割の器官のこと)が発達したもの。毒銛には神経毒の毒腺が付いています。
イモガイは動きが遅い為、魚食性のイモガイは動きが速い魚に対して毒銛を撃ち、動きを麻痺させる神経毒を注入し、獲物が動けなくなると捕食します。
イモガイと同じくらいの大きさの獲物も丸呑みにしてしまうのだとか。

この毒は魚食性、貝食性のイモガイが強く、簡単に人を殺せるレベルだと言われています。
また、最も種類が多い虫食性のイモガイの毒は強力ではないがようですが、扱いには十分注意した方がいいでしょう。

イモガイの天敵カニ

そんなイモガイの天敵として挙げられるのはタガヤサンミナシなどの貝食性イモガイ、その他にはイセエビ、カニなどで、毒銛が甲殻類には効かないそうです。

イモガイの生息域

イモガイは世界中の暖かい海域に生息しているとされていて、特に熱帯域のサンゴ礁に多いようです。

日本では黒潮や対馬海流などで影響がある暖かい海域に生息していると言われています。
本州だと千葉県や高知県などで確認できる様ですが、より暖かい海域を持つ鹿児島県や、沖縄県では生息している種類が格段に増えています。

特に沖縄県では約110種類ものイモガイが生息していると言われています。

日本周辺に生息しているイモガイの種類

日本では約120種類ものイモガイが生息していると言われています。
今回は3種類ほどピックアップしてみました。

アンボイナガイ

アンボイナガイはインド太平洋の熱帯域などに広く分布し、日本では沖縄などの暖かい海域のサンゴ礁などで生息しています。
アンボイナガイは大きい個体で殻高13cmにもなる為、イモガイ科の中でも大型の種となるようです。

アンボイナガイ

基本的に夜行性で、石の下などの人目のつかない場所に潜んでいます。
アンボイナガイは魚食性で夜になると活発に活動するのですが、魚だけでなく人を刺すことがあるようで、イモガイ類の中でも死者や重症者が多いと言われています。
事故は潜水や漁、潮干狩りなどで発生していて、特に沖縄県、鹿児島県での事故が多いようです。

アンボイナガイの毒の強さはインドコブラの37倍と言われているほど強く、血清もないとされています。
刺された際の痛みは蚊に刺された程度の痛みの様ですが、応急処置をせずに20分程経つと、めまいや歩行困難、呼吸困難などの症状が現れます。
アンボイナガイの毒は神経毒で末梢神経の伝達を阻害する作用があり、5〜6時間後に症状のピークに達し、最悪の場合呼吸不全に陥ってしまいます。

沖縄県ではアンボイナガイを『ハマナカー』と呼ばれています。 名前の由来はアンボイナガイに刺されると『浜の半ば』辺りで力尽きて死んでしまうというなんとも恐ろしい様子から由来しています。
英名のCigarette snailは『刺されて死ぬまでタバコ一服くらいの時間しかない』という意味が込められているそうです。

タガヤサンミナシ

タガヤサンミナシはインド太平洋などの暖かい海域、日本では沖縄県などで生息している。殻高9〜10cmで、殻に黒で縁取られた三角の模様が並んでいるのが見た目の特徴。タガヤサンミナシは漢字だと『鉄刀木身無し』。

タガヤサンミナシ
画像:Richard Ling

ハート型の模様が入っている様で可愛いらしい貝殻ですね。
タガヤサンミナシはアンボイナガイと違い貝食性ですが、同じくらい強い毒性を持っています。
沖縄県ではタガヤサンミナシによる死者も出ているとか。

ヤキイモ

次に紹介する『ヤキイモ』は焼き芋ではありません。笑
変な名前の貝ですが、イモガイ科の貝の一種です!

ヤキイモは主にインド太平洋や、沖縄などの暖かい海域に生息している。殻高4〜6cm程で、白地に茶色の斑が不規則にあります。
ヤキイモは殻の色や柄などが違う物を持つ個体も多く、中にはヤキイモの殻と思えないほどの殻を持つ個体もいるようです。

ヤキイモ
画像:Richard Parker

ヤキイモもやはり毒を持っています。この毒の中にはモルヒネの約1000倍の鎮痛作用を持つ成分があると言われていて、2004年にアメリカでヤキイモの毒を真似て『ジコノチド』という鎮痛剤が開発されたそうです。

イモガイの持つ危険な毒性

イモガイはサンゴ礁や砂浜、浅瀬などの人の目に付きやすいところに生息している事が多く、綺麗な柄の貝殻に惹かれ、手にとって毒銛に刺されて死に至るケースもあるといいます。

イモガイ1個体の持っている毒は非常に強力でおよそ30人分の致死量にも匹敵するそうです。

貝を持っているイメージ

非常に強力な毒ですが、刺された時は痛みを感じない事さえ多いといいます。
ですが、しばらくすると刺された箇所に激痛が生じ、次第に痺れ、吐き気、めまい、発熱などの症状が現れます。
また酷い場合だと全身麻痺、血圧の低下などが起こり、最悪の場合呼吸不全で死に至る事もあるのだとか。

この恐ろしいイモガイの毒には血清が無いため、刺された人の代謝によって毒が抜けるのを待つしかないようです。

イモガイの持つ毒銛について

イモガイの唯一の攻撃手段の毒銛は鋭く、刺さりやすい形になっています。
元は歯と舌の役割を果たしていた物で、軟体動物がもつ歯舌と呼ばれる器官が発達したものです。

海岸に並ぶ貝殻

普段は吻と呼ばれる柔軟性のある管の中に隠し持っているのだそう。
銛の中は空洞になっていて、獲物を見つけると根元に付いている毒腺から毒を銛の中に溜め込み、獲物に向かって銛を撃ちます。

銛には刺さった後に抜けない様に逆トゲが付いています。毒銛を受けた獲物の体内には瞬時に毒が周り動けなくなります。
その毒は小魚であれば即死させてしまう程だそうです。

イモガイの捕食

とても恐ろしいイモガイの捕食シーンです。
毒銛を器用に操り獲物に毒を撃ち丸呑みにする様子がわかります。

イモガイは綺麗な貝殻を持つ危険生物

イモガイの綺麗な貝殻は見た目も良いので、コレクションとして収集する人も多く、人気がある貝殻です。
ですが、その反面強力な毒を持っていましたね。

アンボイナガイの毒銛はウエットスーツも突き破ってしまう程強力です。
シュノーケリングや、潮干狩りなどをしている時に見つけても触れないようにした方がいいでしょう。